私が小学校一年生のころのこと。
母方の祖父が他界したのでお葬式に行きました。
オホーツク海沿岸の北見枝幸です。元漁師でした。
お通夜の夜遅く、到着しました。
私の家から母の実家までは車で6時間くらいかかります。
私はすっかり眠くなって、到着するとすぐに床に就きました。
トイレに行きたくなって目が覚めました。
時刻は明け方、外は薄明るくなっていました。
昔の田舎のお屋敷なので、トイレは母屋から離れた別の場所にあります。
もう明るかったのでそんなに怖くはありませんでした。
大人も葬式の仕度で何人かは起きていました。
廊下を通ってお風呂場の隣にトイレに通じる出入り口があります。
玄関のステップに足を置いてサンダルを履こうとした時、風呂場から水
を流す音が聞こえました。
どこかのおじさんが朝風呂してるのかなと思いました。
外のトイレから戻る時お風呂場の窓にハッキリと人影がありました。
今上がろうとしていて身体を拭いているようでした。
出入り口で出会うと嫌だなと思いながら、玄関に戻りました。
予感が当たってちょうどお年寄りがお風呂から姿をあらわしました。
私は仕方ないので「おはようございます」といいました。
お年よりはシャツを整えながら「久美ちゃんおおきくなったね」と言っ
て、廊下の奥に去っていきました。
私には心当たりのないご老人でした。
お昼近くになり、葬儀が始まりました。
参列の皆さんがそろっているはずなのに、
お風呂で会ったお年寄りはいませんでした。
ここの関係者じゃないのに何でこの家のお風呂に入っていたのかなヘンに思っていました。
その時ふっと気がつきました。祭壇にある遺影の老人。良く見るとあの
お年寄りでした。
私は全然祖父に会ったことがなかったのでした。
その後話を聞きましたが、祖父は毎日その時間に朝風呂に入っていたそ
うです。
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